Yours Truly

  • 2017.05.25 Thursday
  • 21:44

「ここ十数年の音楽業界が直面してきた『ヒットの崩壊』は、単なる不況などではなく、

構造的な問題だった。それをもたらしたのは、人々の価値観の抜本的な変化だった。

『モノ』から『体験』へと、消費の軸足が移り変わっていったこと。ソーシャルメディアが

普及し、流行が局所的に生じるようになったこと。そういう時代の潮流の大きな変化に

よって、マスメディアへの大量露出を仕掛けてブームを作り出すかつての『ヒットの

方程式』が成立しなくなってきたのである。

 本書は様々な角度から取材を重ね、そんな現在の音楽シーンの実情を解き明かす

ルポルタージュだ」。

 

「史上最もCDが売れた年である1998年に比べ、2015年の音楽ソフトの生産金額は

40%に過ぎない。6074億円から2544億円へ。この17年でおよそ3500億円の市場が

失われた計算になる」。

 とはいえ、こうした数字を論拠に、音楽業界が時代の動向を掴み損ね、取り残された

証左だ、などという安直な結論を本書は引き出すものではない。それどころか、こうした

数字こそが、音楽シーンと社会の連動性を示唆するものに他ならないことを主張する。

 

 上記の通り、CDは売れなくなった。しかし、それだけの金が音楽コンテンツの消費から

まるまる消え去ったわけではない。「CDよりライブで稼ぐ時代になっているのだ。……

2015年の音楽ライブ・エンターテインメントの市場規模は3405億円。2010年からの5年間で

2倍以上に市場が拡大した」。

 この背後にあるのは、いわゆる「モノ」から「コト」への体験消費マーケティングの隆盛、

いみじくもライブ市場は恰好の仕方でそれを体現する。

 そしてその風景はしばしば、「参加型」の体験として実践される。会場内の聴衆に配布

された無線型ペンライトやLEDリストバンドを「主催者側が無線通信を用いて光の点灯や

点滅、色の変化を制御」することで、客席が視覚的にも「曲や照明や映像と連動」して、

その結果「強い一体感が生まれる」。

 

 とはいえ、本書の骨子というべき社会構造の転換をめぐる議論に別段新しい話が

観察されるでもない。率直に言えば、既知のフォーマットを音楽業界に落とし込んで、

それをおさらいしただけのテキストという以上のものではない。

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  • 2019.08.18 Sunday
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