「人類の原器」

  • 2017.09.16 Saturday
  • 21:33

「ヒョウタンは世界最古の栽培植物の一つで、その歴史は1万年以上をさかのぼる。

日本では、縄文時代の早期に伝わった最古の栽培植物である。近年のDNA研究から、

アメリカ大陸の1万年前のヒョウタンの出土品がアジア系であることが明らかにされた。

原産地はアフリカ。人類の世界での移動を解く鍵を、ヒョウタンが握っているといっても

過言ではなかろう。

 ヒョウタンは軽い上、中が空洞で、水入れとしてはこの上なく重宝である。そのため、

世界各地において土器に先だって使用された。『人類の原器』に値しよう。……実用品

以外にも、神話、象徴など精神的な世界において、各地の民族とヒョウタンは結びついて

いる。本書では、物質、精神の両面からヒョウタン文化の実像を明らかにしていきたい」。

 

 まずはペットボトルとして、そしてその後調理器具として。

 筆者は大胆な仮説を提唱する。「ヒョウタンで湯を沸かしたり、煮炊きをした際、ぬれた

泥の上に置き、それがついた状態で火にかければ、ヒョウタンの表面が泥で保護され、

直接火に当てるよりも痛みが少なく長持ちしよう。……こうしてヒョウタンに厚く粘土を

塗るようになり、後には粘土を焼いただけの土器に展開していったのではなかろうか」。

実に世界最古の工業製品のひとつ、土器さえもヒョウタンが媒介していたというのだ。

 そうしてヒョウタンは食ばかりではなく、衣すらも時に担う。すなわちペニスケースとして。

しかも、男性を象徴するばかりか、「丸くふくらんだヒョウタンは女性の子宮に見立てられ、

そこに含まれる数百粒以上の種子は、子宝として子孫繁栄のシンボルとされる」。

 どこまでも貪欲に人類史に食い入るヒョウタン、恐るべし。

 

 そして単にコモディティの枠すらもヒョウタンは凌駕する。

 例えば弦楽器のボディとして、打楽器として、管楽器として。

 あるいは工芸品として、多彩な装飾が施されることもある。

 かのJ.ホイジンガは、「作る」より先にまず「遊ぶ」ことに人間の性を見出した。

ホモ・ルーデンスたる所以さえも、ヒョウタンは証する。

 ニーズが回す経済なんてたかが知れているのだから、消費の未来はなくてもよいものを

「遊ぶ」ことで伸ばすしかない。

 ヒョウタンはそんな行く末さえも指し示しているのかもしれない。

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  • 2019.08.18 Sunday
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