文春砲

  • 2017.09.24 Sunday
  • 21:17
評価:
吉田 修一
文藝春秋
¥ 1,944
(2016-03-19)

 2014年のノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイのことば。

「一人の子供、一人の教師、一冊の本、そして一本のペンでも、世界は変えられる」。

 

 本書は一見したところ、バラバラな属性の人々の群像劇。

 ある者はビール・メーカーの課長職、ある者は都議会議員の妻、ある者はテレビの

ドキュメンタリー制作者。家族のあり方もさまざま。

 ただし彼らはみな、それぞれに真実に葛藤し、秘密と関わるという点では共通する。

 ある者は、「不感の湯」に浸かりながら、「人の噂も七十五日」と時の経過をただ祈る。

ある者は「俺は正しい。なんでそれが分からない」と猛り狂う。ある者の選択する態度は、

「何も聞いてない」。

 なぜか玄関の前に置かれた酒と米。なぜか買い物かごに迷い込むモモやカニの缶詰。

 やがて彼らの運命が交わる。

 

 彼らは過ぎ行く季節の中で同じニュースを共有し、そして未来を共有する。

 本書の連載媒体は、よりにもよって『週刊文春』。

 その自己言及性の一点で押し切っているような作品。

 作中でとある人物が語る。

「あの時に変えればよかったと誰でも思う。でも今変えようとはしない」。

 一方でこう叫ぶ者もある。

「もう誰にも変えられないんだ!」

 ある人物はふと自覚する。

「羞恥心を持たない声は、どんなことでも言えた」。

 こんな具合に、書き手当人が折々にテーマを言語化してくれる以上、そしてネタバレにも

なる以上、さして訴えるべき声もない。あるいは臆面もなく、「いつやるの? 今でしょ」とか、

クソ寒い声で茶を濁すべきなのだろうか。

 そして世界は果てしなく無残にできている。殺すより他に使い道のないサルのカーニバル、

脊髄反射のネタ消費しかできない社会に、届く声などはじめからない。

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  • 2017.10.22 Sunday
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