バベルの図書館

  • 2018.01.20 Saturday
  • 23:31
評価:
ジョン・アガード
フィルムアート社
¥ 1,728
(2017-11-25)

 

  わたしの

  名前は

  本。

 

  これから

  わたしの

  物語をしよう。

 

   そのうち、粘土板や、アルファベットの発明や、美しい写本や、図書館などの

  話もすることになる。

   しかし、わたしの物語はそのはるか昔から始まる。

 

  本の前に、

  息が

  あった。

 

 本書の原題はBook: My Autobiography、本の本による本のための「私の履歴書」。

 文字の発明、紙や文具の来歴、印刷術の開発、図書館、焚書、デジタル・テキスト――

そんな歴史をシンプルなことばとイラストで綴る。途中しばしば、紹介されるエピソードに

関連した名言も引用される。

 たとえ背景に膨大な研究史が横たわっていようとも、本書自体の情報量は少ない。

 ただし、この素朴さ、簡素さこそが時に本書の長所ともなる。

 象形文字から表音文字へ、そんな機能的な移行に寄り添うように、逆に、その中で

あるいは失われてしまったかもしれない何かを追憶するように、この本が文字と絵で

構成されていることがふと意味を帯びる。

 単に記された情報だけで判定するならば、この価格はいかにも割に合わない。

しかしこのテキストは紙の物語でもある。

「そしてわたしは電子書籍に語った。古代ローマ時代、ヴェラムでできていたときの

わたしはサフランの香りがしていたし、ヴィクトリア朝の時代には、わたしの紙は

ラベンダーやバラの花びらが貼りつけてあったので、その香りがした。

 それから、すぐに、こういった。もちろん、すべての本が同じにおいがするわけでは

ない。しかし、本に慣れ親しんだ人の鼻は、ワインのソムリエの鼻のように、熟成した

木のパルプの香りにヴァニラの香りがかすかにまじったようなにおいをかぎとることが

できる。それはまるで、森そのものが、わたしに古代の知恵の香りを押印してくれた

かのようだ」。

 ハードカバーで綴じられた、ほのかに赤みのさしたクリーム色の紙に指を走らせる。

本が媒介するものは視覚情報に限られない。たとえものを語らずとも、物体としての

本には伝達できる快感がある。

 そして紙の束が火にくべられようとも、「記憶は、真実と同様、常に証人を見つける」。

 

  紙は燃えても、言葉は飛んでゆく。

 

 古代パレスチナのラビ、アキバ・ベン・ヨーセフなる人の言だという。

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  • 2018.09.17 Monday
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