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    〈子供〉の誕生

    • 2018.03.19 Monday
    • 23:52

    「西洋美術には、……なんらかの機能をもち、あるいはなんらかの目的をもって描かれた

    美少女たちがいる。本書では、こうした美少女たちを、テーマごとに見ていく。まず

    1章で、現代まで続く近代的な美少女像が確立された過程を見る。……第2章では

    古代と神話における少女像を、第3章ではキリスト教が推し進めた美少女イメージを

    とりあげよう。続く第4章では、中世のあいだ失われていた古代的な美少女像が復活した

    ルネサンスの状況を整理し、そして第5章ではバロックとロココ時代の美少女イメージを

    読み解いていく。……さらに最後の第6章では、印象派やラファエル前派といった、

    19世紀末から20世紀にかけての美少女像の展開を扱う」。

     

     スペインの名手、ディエゴ・ベラスケス作「ラス・メニーナス」。絵画の中央、宮廷で侍女が

    仕えるのは王女マルガリータ、当時まだ5歳に過ぎない。ここで注目したいのはその衣装だ。

    描かれた17世紀には「まだ、子ども服という概念そのものが存在しなかったのだ。華奢な

    骨格にコルセットやパニエをふんだんにあしらったこのスタイルは、子どもという概念が

    存在しなかった時分、大人のミニチュアとして扱われていたことを証明する根拠」ともなる。

     

    「西洋で子どもという概念が発見されたのは17世紀も過ぎたころのことで、それまで子どもは

    大人の縮小版と見なされていた。……そうした環境が一変したのは、18世紀から19世紀に

    かけてのことである。……18世紀、啓蒙主義思想の発達によって子どもという概念が説かれた

    ことをきっかけに、大人たちの関心は徐々に子どもへと向かっていく。そしてその関心を

    後押ししたのが、産業革命による工業化社会だった」。

     それはまるでフィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生』を祖述する。本書は単に絵画史上の

    美少女の系譜を辿るものではない。そして残念ながら、技術史的な展望が開けるでもない。

    そもそもなぜ美少女は描かれるようになったのか、それこそが本書最大のテーマとなる。

    絵画を手がかりに、その裏側にある歴史コンテクストを読み解いていく。

     本書の議論は、ヨハネス・フェルメールにひとつの頂を見るだろう。

    「真珠の首飾りの少女」。見る者の眼差しに呼応するように少女が見返す。独立戦争を

    くぐり抜けたオランダにおける市民社会の発達が、貴族や名士の血を引くでもないだろう

    「一般家庭の子女」を絵画の主題に変貌させた。それまで顧みられることのなかった少女が

    描かれる対象、見られる対象として、こちらを見つめる主体へと変わる。

     見る−見られる。交錯する視線がすべてを商品化していく近代自由主義経済を予兆する。

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