勝ちたいんや

  • 2018.03.25 Sunday
  • 21:40

「数学はサッカーのさまざまな疑問に答えられる。チャンピオンズリーグ決勝の終了間際に

2ゴールが決まる確率は? マンチェスター・ユナイテッドのファンがどう言おうと、これは

純粋なランダム性の問題だ。なぜバルセロナの『ティキ・タカ』のパスはあれほど効果的

なのか? それは幾何学や動力学の問題だ。なぜリーグ戦の勝ち点は3なのか? 

それはゲーム理論やインセンティブの問題だ。メッシとロナウド、どちらの方が名選手か?

それは巨大な統計的偏差の問題だ。ヒートマップやパス・データは試合の何を物語るのか?

それはビッグデータやネットワーク化されたシステムの問題だ。なぜブックメーカー(賭け屋)

はあれほど魅力的なオッズを提示できるのか? それは確率と心理学の組み合わせの

問題だ。そしてなぜギャンブルで勝つのは難しいのか? それは集合知と平均の問題だ。

 こうした疑問については。本篇で追い追い詳しく説明していくつもりだが、私の夢は

もっと先にある。『サッカーマティクス』(サッカー数学)の問題は、単に飲み屋の会話の

ネタになるような、数学にちなんだサッカー雑学をいくつか提供することではない。あなたの

数学観とサッカー観の両方を一変させることなのだ。私は数学とサッカーが互いに手を

取り合えると信じている。数学はどうあがいてもサッカーに勝てないが、互いに学び合える

ことはたくさんある。数学はサッカーの理解に役立つし、サッカーは数学の説明に役立つ」。

 

 粘菌(変形菌)なる奇妙な生物がいる。摂食で栄養を補給しつつも胞子で増殖する。

「粘菌は脳を持たず、単一の細胞からなる。粘菌の“体”は、養分を輸送する網目状の

管のネットワークである」。効率性とリスクヘッジを兼備したまことに見事なネットワーク

作りで知られるこの粘菌だが、実はこのシステムがバルサのパスワークに酷似する。

他方で、そのチームを計7-0で粉砕したハインケス・バイエルンのフルコート・プレスは

ライオンが協力関係のもとで獲物を仕留める連携の仕方にひどく重なる。

 とはいえ、まだジャンル開拓の端緒に過ぎないというべきか、それとも単にファンの

知的水準に合わせたせいなのか、本書における考察は全般に粗雑としか見えない。

 件の粘菌についても、ソーンとネットワークの実例として筆者が提示するのは、とある

試合におけるたった一点のゴール・シーンに過ぎない。数多の試合サンプルの分析から、

この「構造」と得点の相関性を説明するでもなければ、チャンス・クリエイトをめぐる他の

説明関数を深く検討するでもない。ディフェンス側が数的優位を作って絞り込む、という

アプローチにしても、狩りならばなるほど追いつめてしまえばほぼゲームセット、ただし

サッカーの場合、味方にボールを預けるとか、ファールをもらうとか、相手の身体に当てて

ラインを割る、という逃げ道がある。この手の戦術分析やパスワークの構築メソッドなんて、

手が使える、つまりはるかに高いプレイ精度の期待できるバスケットボール界隈にいくらでも

数理的データが転がっていそうなものだけれど。

「カリスマ性のあるリーダー」とやらが「チームの努力レベル」を引き上げると宣う精神論に

至ってはただ閉口させられるばかり。サッカーにおいてそのパフォーマンス曲線を規定する

ために必要な関数はいったい何なのかを割り出したり、「カリスマ性」を数学的見地から

定義するのが仕事というものだろう、そんなものがあればの話だけれども。

 勝ち点の設定とゲームプランの関連にしても、得失点差が場合によっては命取りになる

レギュレーション下において、実戦のスコアラインに応じて目指すべき戦略がその都度

変わってくることについての考慮はなんら図られない。

 ブックメーカーを出し抜いて儲けを得るには、というギャンブル論にしてもはるか昔に

語られ尽くした統計学の焼き直しで、目新しい話は何もない。次に高騰する銘柄はこれ、

なんて記事を真に受ける輩が後を絶たないのを鑑みるに、これでも世間的には十分に

フレッシュな知見なのかもしれないが。

 

 数値化されない幸福、それは例えば鳥谷、西岡、糸原に発狂せずにいられること。

 北條君、かわいいやん。

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  • 2019.08.18 Sunday
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