野良犬

  • 2018.04.09 Monday
  • 23:28

「アフリカを席巻するジハーディストの暴力は、今日の世界や歴史がはらむ問題が、

辺境で表面化したわかりやすい実例である。欧米主導の世界とイスラーム世界の対立、

グローバリゼーションがもたらす富の偏在化と格差、環境問題など、さまざまな問題が、

ジハーディストの暴力の『養分』となっている。

 アフリカの紛争や戦争、暴力は、ほかの世界から切り離されて単体でそこに存在して

いたものではない。ましてやアフリカ人が暴力的だから起きているわけでは決してない。

今日と世界と世界の歴史と無関係どころか、その矛盾の発露だと言っていい。そして、

その『世界』には当然、日本も含まれているのである」。

 

 本書が明らかにするのは、ある面、「文明の衝突」ですらないむき出しの真実、

つまりは経済、格差の問題。

 当時無職にあったあるケニア人男性は、戦闘員募集に応じ訓練の後、ソマリアに

投入されるも敗走を余儀なくされた。「軍側は当初、月額600ドル(約72000円)の

報酬を約束したが、ソマリアで戦闘に従事した約7か月間に支払われたのは計28000

ケニア・シリング(約3万円)だけだった」。ところで同時期、国内では軍隊経験者の

リクルート市場が活発化していた。「紹介者に5万シリング(約5万円)、戦闘経験の

豊富な参加者には月額20万シリング(約20万円)を保証、ケニア軍の給与未払いに

不満を抱く多くの若者を引きつけ」ていた。昨日の友は今日の仇、雇い主は敵陣営の

ジハーディスト、アルシャバブだった。

 自分をより高く買ってくれる同業他社の誘いに乗る。健全な転職活動の風景だ。

 

 先に引いたボコ・ハラムは、いつしかアルカイダに背を向けてISへの接近を強めた。

自爆テロや面的支配といった戦術的な類似性だけでこの転向の説明はつかない。

何せ「ISは今や世界一裕福なテロ組織。一方、ボコ・ハラムなど多くの過激派は資金や

物資を必要としている」。

 ここでもまた、需要と供給の幸福なマッチングが見られる。商業の基本だ。

 

 チャド湖という、20世紀後半に急激な縮小に襲われた湖がある。降水量の減少など、

気候変動によるものと推察される。漁業、農業をはじめ、沿岸の産業に深い傷を与えた。

アフリカ一の産油国のナイジェリアにあっても、北東部のこの地域は恩恵をほとんど

享受できないまま、今日に至っている。そんな住人にボコ・ハラムが雇用のパイを

差し出せば、彼らは当然飛びつくだろう、否、飛びつくしかない。米軍兵の供給地が

地場産業の崩壊した貧困エリアに集中する現象と別段変わるところはない。

 

「辺境」のせいか、いちいちが多少誇張したかたちで現れているだけ。

 宗教も民族もネポティズムも何もなく、地球上のいずことも特に違えるところはなく、

すべてが至極分かりやすい経済活動として推移していく。狂信性の成れの果てとして

ではなく、合理的な選択の帰結としてのテロリズム、だからこそ出口が見えない。

「貧困がテロにつながり、テロがさらに貧困を促進する」。

 行き着く先にさらなる貧困や外部性の待ち受けるジハーディストの暴力連鎖とて、

戦争経済学に予め織り込まれた実践例の域を何ら出るものではない。

「おれたちはモンスターじゃない」。

 ナイロビのスーパーで銃を乱射した男が襲撃に際して漏らしたことばだという。

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  • 2018.05.29 Tuesday
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