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    豊饒の海

    • 2018.04.24 Tuesday
    • 23:01
    評価:
    志賀 健二郎
    筑摩書房
    ¥ 2,700
    (2018-03-16)

     博覧会の展示物に値札をつけることで、世界最古の百貨店ボン・マルシェは生まれた。

     と、展覧会と百貨店をめぐる私の知識はそこから一気に、堤清二率いるパルコ・セゾン

    文化まで飛躍する。その間のことなんて、考えたことすらなかった。

     

    「百貨店の展覧会実績をつぶさに見ていけば、歴史、文学、芸能、科学、学術ほか様々な

    文化・芸術の分野が取り上げられていて、さらに時事的な話題や社会的な問題をテーマと

    したもの、子どもたちを対象とした教育や娯楽的なもの、人々が趣味や教養として研鑽を

    積んだ成果の発表、企業や行政によるプロモーションが“○○展”の名で開催されていた。

    (中略)本書は、東京都心の百貨店が、展覧会という事業によって戦後昭和の都市生活者に

    どのような文化や娯楽を提供してきたかを紹介するとともに、百貨店がなぜそうした事業に

    力を入れて取り組んだのか、またどのような影響を社会に及ぼしてきたのかを考察し、

    あわせて昭和の世相の一端を垣間みようというものである」。

     

     朝鮮特需ととも百貨店が上向きに転じた50年代、一際好評を博した企画があった。

    主要寺院の国宝、重要文化財の展覧会だ。文化財保護法の制定で、保存とともに「活用・

    公開」へと舵を切った国家の下、集客が見込める百貨店と経済的に困窮する所有者の

    利害が見事に噛み合った結果だった。

    「日本が貿易・為替の自由化に踏み切ったのは、東京オリンピックの年であった」。

    かくして展覧会も画期を迎える。各店がこぞって英国を中心に海外フェアを実施した。

    とはいえ、それ以前にも抜け穴がなかったわけではない。「わが国百貨店が欧州諸国の

    百貨店と提携して、双方のデザイン研究に資する商品を等額に交換し、これを当事者の

    店舗に展示した後販売すること」は通産省のお墨付きだった。

     そんな具合に、本書は単に年代別に目録を羅列するに満足せず、各々の時代背景を

    たどっていく中で展覧会の向こうに消費社会の脈動を捉えていく。

     

     19701112日から17日、池袋東武にてある作家の展覧会が開かれた。

     企画を立てた百貨店にとっては、駄目でもともと、という思いで持ち込んだ話だった。

    そんな予想に反して快諾した作家は、どころか能動的に案を提示した。「展示物の背景を

    白黒で統一すること」も作家の主張だった。かくして急ピッチでこぎ着けた展覧会は、

    「『書物』『舞台』『肉体』『行動』の四つの河にわけて構成され、黒一面の壁面を背負って

    これまでの創作、活動を、小学校時代の作文から自身の裸体写真までを含めて全人格的に

    示す」ものとなり、好評のうちに幕を閉じた。

     後に思えば、何もかもが生前葬を暗示していた。

     同月25日、作家は市ヶ谷で自裁した。

     

     今日、百貨店の一階を占めるのはもっぱらマーケティング商品の花形としての化粧品。

    匂いを逃がすといった事情もあるようだが、百貨店が華やぎをそこに認めなければ、そして

    儲けが得られなければ、かくも広大な面積を自らの顔となるフロアに配置しようはずがない。

     昭和のテレビCM隆盛期、資生堂を舞台に、今日に至るメイク・アップ・ブランディングを

    確立した巨人があった。その名を杉山登志という。死から四年、新宿伊勢丹で開催された

    回顧展には、上映される作品集を目当てに、若者たちが列をなして殺到した。

     時代の寵児は絶頂の最中、訣別の辞とともに自ら命を絶った。

    「リッチでないのに/リッチな世界はわかりません。/ハッピーでないのに/ハッピーな

    世界などえがけません。/『夢』がないのに/『夢』をうることなどは……とても/

    嘘をついてもばれるものです」。

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