スポンサーサイト

  • 2018.05.29 Tuesday

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 0
    • -
    • -
    • -

    ハンドパワー

    • 2018.04.27 Friday
    • 22:05
    評価:
    泡坂 妻夫
    KADOKAWA/角川学芸出版
    ¥ 1,166
    (2016-01-23)

     泡坂妻夫。名前だけは知っていた。没後今なお、実験的な手法をもってカルト的な

    人気を誇る推理作家、どうせ旧帝大のミス研出身だろう、と考えていた。そんな人が

    なぜ家紋? と思いきや、家業は東京神田に代々続く上絵師だという。

    「紋の研究書や一般教養書は数多く刊行されましたが、……内容は紋の分類やその紋を

    使っている家の家系や由緒の説明に費やされているだけです。紋を歴史的な遺産として

    とらえ、紋を作り出した職人の技術的な重要さにはあまり目が向いていない。……その

    理由ははっきりしていて、毎日紋を描き続け、紋の難しさや面白さを一番よく知っている

    はずの、上絵師が書いた本が一冊もこの世にない、ということです」。

     

     口を動かす前にまず手を動かす。

     そんな職人の粋が無類の説得力をもって迫る瞬間が訪れる。

     ポピュラーな紋の一つに巴がある。レパートリーの中でも、三つの巴が「時計と同じ廻り方、

    つまり左巻に渦を巻いている」ものを指して「右三つ巴」、逆に渦が右廻りのものを指して

    「左三つ巴」という。いかにもややこしい、結果、研究者には取り違えるものが後を絶たず、

    とある出版社に至ってはその区別を統一してしまった、と嘆く。

     しかし職人ならばそんな錯誤を起こすはずがない、と筆者は断言する。というのも、

    「巴の左右は、その渦の巻き方による名称ではないのです。

     このことは、巴と兄弟分の卍と巴とを並べて見れば一目瞭然。

     卍は十の形の各先端に、鉤が出た紋です。その鉤が出た方向が左なら左卍。右なら

    右卍という名が付けられました。

     卍から少し遅れて弟分の巴が現れました。巴の左右は卍の名称を踏襲しているのです。

    卍の丸を見ればそれが一層はっきり判るでしょう。卍の細い部分が巴の尾に対応している。

    つまり、左卍と左巴は同類形なのです。

     つまり、卍の左右は渦の巻き方ではなく、作図上から作られた合理的な名称なのでした」。

     

     職人にしてみれば、ただ伝統を踏襲するに留まらない、日々の技術的進化の過程が

    紋には込められている、という。そんな試行錯誤の洗練や遊び心が本書にも反映される。

    例えば紋と紋をフュージョンさせて新しい紋を作り出す。桐や牡丹といった典型的な紋を

    あえて「乱」れさせたり、「踊」らせてみる。丸の内部に収まっていて然るべき紋があえて

    その境界を侵犯することだってある。丸のフレームを樹木の枝に見立ててデザインする。

    モノトーンの白黒をあえて反転させてみたり、抜いてみたりも当たり前。

     そもそも紋とは量産可能なデフォルメに他ならず、手法はどこかマンガを連想させる。

    というか、歴史の順序を辿れば当然、逆の言い方をしなければならない。

     紋がマンガに似ているのではなく、マンガが紋に似ているのだ。

    スポンサーサイト

    • 2018.05.29 Tuesday
    • 22:05
    • 0
      • -
      • -
      • -
      コメント
      コメントする








          
      この記事のトラックバックURL
      トラックバック

      PR

      calendar

      S M T W T F S
         1234
      567891011
      12131415161718
      19202122232425
      262728293031 
      << August 2018 >>

      selected entries

      categories

      archives

      profile

      search this site.

      others

      mobile

      qrcode

      powered

      無料ブログ作成サービス JUGEM