スポンサーサイト

  • 2018.05.29 Tuesday

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 0
    • -
    • -
    • -

    ヒューリスティック

    • 2018.04.27 Friday
    • 22:10

    「私が生命、地球、宇宙の進化をテーマに選んだのには、主にふたつの理由がある。

    ひとつめに、偉人と聞いてほとんどの人が真っ先に思い浮かべるような学者たちの犯した

    過ちを、批評的に考察してみたかった。こうした偉人たちの過ちは、過去一世紀のもの

    だけを取ってみても、今日の科学者(そしてすべての人間)が抱える疑問ときわめて

    密接に関連している。そうした過ちを分析することで、面白いだけにとどまらず、科学的な

    活動から倫理的な行動まで幅広い分野の行動指針として使える生きた知識体系を築ける

    ことを証明したいと思っている。ふたつめの理由は単純だ。生命、地球、宇宙の進化という

    話題は、文明の幕開け以降、科学者だけでなく全人類の興味を掻き立て、人類の起源や

    過去を明らかにするための飽くなき探究活動を刺激してきたからだ。こうした話題に対する

    人間の知的好奇心は、少なくとも部分的に、宗教的な信条、創造に関する神話、哲学的な

    探究の根源になってきた。と同時に、この好奇心のより実証的な側面、証拠に基づく側面

    こそが、やがて科学を生みだした。人類はこれまで、生命、地球、宇宙の進化にかかわる

    複雑なプロセスの解明に向けて、前進を遂げてきた」。

     

     進化論のC.ダーウィン、温度の単位に名を残すケルヴィン卿W.トムソン、ノーベル賞を

    複数回手にした化学研究者L.ポーリング、天体物理学者として名を成し、SF作家としても

    A for Andromedaなどで知られるF.ホイル、言わずと知れたA.アインシュタイン。

     科学界を覆っていた常識にブレイクスルーを持ち込んだ巨人とて時に過ちを犯す。

    本書の構成はある面でとてもシンプル、まずそれぞれがどれほどまでに革新的な論を

    唱えた存在だったのか、という科学史を辿り、その上で彼らが何につまずいたのか、を

    明かしていく。当時の技術的限界に由来するものもあるだろう。通説の破壊者をもってして

    超えられなかった常識の壁もある。しかし本書が指摘するのは、彼らのごく人間的な側面。

    メンデルによる遺伝の法則をダーウィンが自らの説に取り込むことができなかったのは、

    筆者に言わせれば、「自信の幻想」に憑かれていたせいだ。自説の穴を突かれようとも

    己の信念に固執し続けたケルヴィンは、筆者に言わせれば、「認知的不協和」の典型を

    示している。宇宙定数の導入をアインシュタインは「人生最大の過ち」と悔やみ続けた、

    今なお語り継がれるこのエピソードにもすぐれて人間的な要素が関わっていた。

     

    「名案を思いついたと思ったら、とにかく発表しなさい! 間違いを恐れちゃいかん。

    科学では、間違いは何の害も及ぼさない。科学界には、すぐに間違いを見つけて訂正して

    くれるような優秀な人間がたくさんいるのだ。……しかし、もし名案なのに発表しなければ、

    科学が損失をこうむるかもしれんのだ」。

     本書の営みはつまり、ポーリングによるこの至言に説得力を与える試みに他ならない。

    後出しじゃんけんで先人をくじくだけ、そんな不快な作業に没頭するだけの代物ならば

    参照に値するものなどない。本書がほぼ一貫して「失敗」に対して「偉大brilliant」という

    敬意の態度をとり続けるのは、科学が「AからBへと一直線に進化していくわけではなく、

    批評的な再評価や誤りを見つける相互的な交流を通じて、ジグザグの道をたどりながら

    進化していく」ことを知るからに他ならない。

     そしてその教訓は科学研究の門外漢にすら及ぶ。恐れるべきは失敗ではなく、失敗から

    何の学びも得ないこと、このことが該当するのは、何も先端理論の探究者に限らない。

    そして幸いにも、人間は失敗の種には事欠かない。というのも、「人間は、感情を完全に

    オフにできる純粋に理性的な生き物ではないのだ」から。失敗を成功の母とできるか、

    それこそが「偉大」か、否か、の分水嶺となる。

    「人間は、ありとあらゆる高貴な品性を持ち、もっとも下劣な者に対しても同情心を抱き、

    ほかの人間のみならずもっとも下劣な生物に対しても慈愛を示し、太陽系の運動や

    構成をも見通す神のような知性を持っている。しかし、こうした崇高な能力にもかかわらず、

    それでもやはり、人間の肉体的な造形の中には、消すことのできない卑しい起源の刻印が

    刻まれていることを、認めぬわけにはいかないと私は思うのである」。

     本書を読み終えた後ならば、ダーウィンによるこのフレーズもなおいっそう奥行きを増す。

    スポンサーサイト

    • 2018.05.29 Tuesday
    • 22:10
    • 0
      • -
      • -
      • -
      コメント
      コメントする








          
      この記事のトラックバックURL
      トラックバック

      PR

      calendar

      S M T W T F S
         1234
      567891011
      12131415161718
      19202122232425
      262728293031 
      << August 2018 >>

      selected entries

      categories

      archives

      profile

      search this site.

      others

      mobile

      qrcode

      powered

      無料ブログ作成サービス JUGEM