人生ゲーム

  • 2018.11.27 Tuesday
  • 22:14
評価:
中川 右介
朝日新聞出版
¥ 983
(2018-09-13)

「この本は記憶をもとにこの一年を調べ、新書という器に盛り込んで、『1968年』を

再構築する試みである。……意味付けするのでも、論じるのでもなく、単純に

『面白い読み物』であることを目指す。/ただ根底にあるテーマというか、問題意識を

簡単に述べておくと――一般に語られる『1968年の闘争』は、『プラハの春』も

五月革命もアメリカや日本の学生運動も、ことごとく敗北した。……しかし、一方で

1968年前後はポップカルチャーにとって黎明期であり、現在のサブカルあるいは

ポップカルチャーの礎となるものが次々と登場した。ハイカルチャーがほぼ壊滅して

いる現状を見れば、1968年の学生運動は敗北したが、同時期に勃興したサブカルは

『革命』として成就したと言える」。

 

 こうしたまえがきに連なるかたちで、「この本では一部の先鋭的・前衛的な人々に

もてはやされたものではなく、大衆が支持したヒット作品を主軸にして書く」との

アプローチが示される。

 実はこの何気ない宣言が、「1968年」の「敗北」理由を何よりも雄弁に突きつける。

 つまり端的に経済の問題だ。

「プラハの春」は、東欧の小国では太刀打ちできるはずもないソ連の軍事力の前に

屈従を余儀なくされた。五月革命は労組の取り込みによって民衆の分断を図った

フランス保守の奸智を前に無残に散った。ベトナム反戦運動の末、食えない現実に

直面したアメリカの学生は寝返りを打つ、これをもってネオコンは定義される。

 ポップだってそれと同じ。論壇がもてはやす『ガロ』やアングラとて、そうした言及に

一定の消費ニーズがある、もしくは、あった、という傍証という以上の価値を持たない。

映画界のいわゆる「五社協定」の崩壊とて、独裁者の横暴云々などという話ではなく、

単にそのビジネスモデルの終焉によってもたらされた。

 帯に「日本がいちばん熱かった年」とある。なるほど、そうかもしれない。間もなく

到来するだろうオイル・ショックは否応なく「成長の限界」を日本経済に告げ知らせ、

以後、国債によってひたすら実体を粉飾し続ける、消え際の線香花火としての20年と、

「失われた30年」に突入するのだから。

 もし私たちが今『2018年』というテキストを書くとして、映画をメイン・トピックに

組み入れようとはしない。年間興収たかだか2000億円強の市場規模しか持たない

産業に時代を反映するものなど何もないことを知っているから。スポーツも同じ、

もはや見せ場は競技ではなく、土建屋や広告代理店のカーニバルの他にない。

ほんの20年前、653万もの発行部数を誇った『ジャンプ』は今や200万すら割り、

『マガジン』も100万ラインを下回った。現代の少年誌に語るべきものがあるとすれば、

それは「クールジャパン」(笑)などではなく、消費対象世代の母数減少がもたらす

未来の推移予測資料としてでしかない。

 時代の表象を探るに、例えばSNS、検索サイトのカウントや雑誌のランキングなど

何らの用をも果たし得ない。ただ、動いた金額のみを注視しさえすればいい。

 

 餌を求めて這いずるネズミにいかなる精神性を見出すことができようか。

 時代を論ずるに、ザ・タイガースや江夏豊に触れたところで何になろうか。

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