にわにはにわにわとりがいる

  • 2018.12.31 Monday
  • 18:55
評価:
アンドリュー・ロウラー
インターシフト
¥ 2,592
(2016-11-17)

「ニワトリは、静かに、だが容赦なく、不可欠なものとなった。ほとんど飛べない

けれども、国際間の輸出入を通じて世界一の渡り鳥になったのだ。……ニワトリは

昔もいまも、いわば羽の生えたスイス・アーミー・ナイフで、与えられた時間と

場所に応じて必要なものを提供してくれる万能動物なのだ。この可塑性のおかげで

ニワトリは最も有益な家畜となったわけだが、その点は私たち自身の歴史をたどる

上でも役に立っている。ニワトリは鳥の『カメレオンマン』のようなもので、

私たちの変わりゆく欲望や目標や意図――立派な品物、真実の語り手、奇跡を起こす

万能薬、悪魔の道具、悪魔祓いの祈祷師、途方もない富を生む財源――を映し出す

不気味な鏡であり、人類の探検、発展、娯楽、信仰を示す標識なのだ」。

 

 奇しくも英単語で占いをあらわすauguryは古代ローマの故事、鳥auisの針路に

未来をたずねたことに由来する。風見鶏よろしく、本書が教えるニワトリをめぐる

トピックから人間の歩みを占う。

 古代ギリシアで医神アスクレピオスへの供え物といえばニワトリが定番だった。

生命と医学のアトリビュートとしてのニワトリ、その図式は現代に引き継がれる。

例えばインフルエンザの予防接種に用いられるワクチンは鶏卵内で培養される。

そもそもL. パストゥールにワクチンの有効性を気づかせたのもニワトリだった。

ただし皮肉にも、この偉大なる発見は当のニワトリを鶏コレラから救わなかった。

というのも、「予防接種をするよりも、感染した鳥を隔離して殺処分するほうが

安上がりで効率的」だったのだから。

 ニワトリがもたらす救いは医学だけではなかった。20世紀初頭のアメリカ、

とある雑誌のすすめで女性がニワトリを飼いはじめた。馬鹿にする男どもを

尻目に、金を生む卵は女たちに「誰かに依存しているという感覚」から

飛び立つ契機を与えた。

 マリの農村で異変が起きた。昔からの習わしで「住人は予言が欲しいとき、

死ぬニワトリが右へ倒れるか左へ倒れるかを見守る」。ところが、この占いを

無効化するニワトリがもたらされた。「胸が重たくて、前へ倒れてしまう」。

アメリカから持ち込まれた「産業用ニワトリ」だった。女性たちが結集して

養鶏に励んだのも遠い昔、フォーディズムを体現する集約型巨大産業の育む

「明日のニワトリ」は、「できるだけ少ない飼料で、できるだけばらつきの

ないように、速やかに成熟する鳥」、その血が遠くアフリカに持ち込まれた。

効率性の代償を払わされるのはニワトリだ。肉の発達に内臓や骨格の発育が

追いつかない結果、慢性的な痛みを宿命づけられる。狭い鶏舎で他を

傷つけることがないように、くちばしは予め焼き切られる。時を告げる鳥が

文字通り日の目を見ぬままその生涯を閉じる。その終わり際も壮絶だ。

「屠畜場では、かなりの割合の鳥がナイフで喉を切られても死にきれずに

熱湯槽のやけどによって死ぬ羽目になる」。業者を非難するのはたやすいが、

そうでもしなければ、世界的な鶏肉、鶏卵の需要を埋めることなどできない。

 経済性、生産効率を突き詰めた先に待ち受けるのは「絶滅する運命では

なくて、増殖する運命」、それも「絶滅よりも悪い運命」。

 ニワトリは今もなお、預言者として君臨している。

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  • 2019.01.21 Monday
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