どうもすいません

  • 2019.02.02 Saturday
  • 22:30

「こうして食事という義務を済ませた僕らは、空いたグラスに飲み物をつぎなおし、

パイプに火をつけて、健康状態についての議論にまた取りかかった。実際どこが

どう悪いのかは誰もはっきり言えなかったが、三人が文句なしに一致したのは、

病気が何であるにせよ働きすぎが原因だという点だった。

『僕らに必要なのは休養だよ』とハリスが言った。

『休養を取って、気分を一新することだな』とジョージ。……僕はジョージに賛成し、

どこか人の来ない昔ながらの場所を探そうじゃないかと提案した。群衆の狂騒から

遠く離れ、なかば眠ったような小道の通る村で日なたぼっこをして一週間を過ごす

……『そうだとも。休養と変化が欲しいなら、船旅にまさるものなしだ』」

 

 弥次喜多ものというべきか、あるいは与太郎ものというべきか、とにかく古典的な

ショート・シチュエーション・コント集。

 珍道中旅日記の殿堂としてまず誰しもが連想するものといえば『ドン・キホーテ』、

ただし本書にツッコミ役としてのサンチョ・パンサの影はなく、それゆえ起きることと

いえば、類は友を呼ぶで知的レベルの似通った三人組が代わる代わるナンセンスな

ギャグと呼ぶのもためらわれるようなギャグを繰り出すだけ。「緊張と緩和」理論を

傍証するように、益体もないことばがメリハリなく垂れ流される。

 しかも構成がうまくない、何せほぼすべての章に数ページにもわたる過去の

おもしろエピソードが挿入されては、物語進行の腰を折り続けるのだから。

 あるいはテムズの川上り描写に古き良き英国の原風景を訪ねる、なんて高尚な

読み解きもできなくはないのだろうが、「霧の都」とはつまりPM2.5以外の何物でも

ないわけで、例の反現実ノスタルジーの試みとして挫折を余儀なくされる。

 

 とはいえ、かくのごとき現代から振り返っての揚げ足取りに終始しても仕方ない、

それは林家三平――終身名誉いっ平ではなく――を掘り起こして酷評したところで

「昭和の爆笑王」としての栄えある過去が消えないのと同じ。

 古いものに古いと言って何になる? だから風化に委ねてそっとしてあげよう。

 ――と締めるつもりで気まぐれにamazon.co.ukthree men in a boatを検索したら、

あら、びっくり、レビュー数787件、本国では今なお読み継がれているらしい。

 正気かよ、ブリテン。

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  • 2019.05.24 Friday
  • 22:30
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