地球の歩き方

  • 2019.04.15 Monday
  • 22:59

「世界の各地に生息する動物の進化や多様性、そして、その起源地や渡来の

経路を探る研究を動物地理学という。これまでの動物地理学研究から、

ユーラシア大陸が、日本の動物たちのふるさとであることがわかってきた。

かれらがたどってきた進化の歴史を知るには、ユーラシア大陸の動物との

比較研究を避けては通れない。……本書では、私がこれまでユーラシアで

出会った共同研究者とともに取り組んできた動物学研究の成果を紹介しながら、

日本とユーラシア大陸の関係を考えていきたい。さらに、主にフィンランドや

ロシアにおける様々な地域を旅する間に経験した出来事に基づいて、ユーラシア

大陸の雄大な自然や人々の文化も紹介する」。

 

「北欧フィンランドは、日本から見ると、遥か遠い西の国であるが、国の並びから

見れば、ロシアをはさんだお隣である。……フィンランドの面積は約338000

平方キロメートル、その人口は約550万人(20171月現在)で、人口密度は

1平方キロメートルあたり約16人。……南端にあるヘルシンキは、北緯60

10分に位置し、バルト海のフィンランド湾に面している。……森林が多く、かつ、

188000個の大小の湖が点在している。……道路標識、電車やバスの

停留所の標識など、ほとんどの表示が、フィンランド語とスウェーデン語の両方で

記載されている……フィンランドではサウナに人気があり、ヘルシンキ大学の

宿舎においても、共同のサウナがある。……クロスカントリーやスケートなどの

ウィンタースポーツは人気がある」。

 いったいどこの旅行ガイドの概説文かと訝る向きも多かろう。ところがこの本、

れっきとした動物学研究の新書。そして、この記述がとりわけ変則性において

際立つでもない。

 もちろんDNAシークェンサーなどを用いた分析等も披露されるが、たぶん単に

生態系の分布や進化の系譜を知りたいということであれば、もっと適したテキストは

他にもあるのだろう。

 しかし筆者の主眼はそこにはない。動物を知るにはただひたすら動物のみを

調べていればいい――わけではない。そのことを一般読者に広めるためにこそ、

おそらく本書は記されているのだから。

 射程に入るのは何も地理的な情報に限らない。博物学的な分類にその時代の

歴史が関わらないわけはない。シーボルトは日本固有の種を求めて標本を集め、

そして『ファウナ・ヤポニカ』を著した。こうした研究が外国人によってでなくしては

かなわなかったその事実に、政治や言語や技術など、いったいどれほどの要素が

絡み合っているだろう。時代の文脈と学問が無関係でいられるはずがない。

 シーボルトはニホンイタチを日本固有の独立種として報告していた、にもかかわらず

編集の過程で北ユーラシアのシベリアイタチの亜種として説明されるようになった。

骨格等の検討に基づいて下された独立種との認定に対して加えられたこの修正に

さしたる動物学的論拠などなかった。当時のヨーロッパにおける世界観、地理観が

作用しただろうことは想像に難くない。

 

 学問を究めるとは必ずしも細分化や専門化のみを意味しない。

 地球は広い、でもテキストの世界、脳の中、知性の織りなすホーリズムのウェブは

はるかに広く、そして深い。

スポンサーサイト

  • 2019.05.31 Friday
  • 22:59
  • 0
    • -
    • -
    • -
    コメント
    コメントする








        
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    PR

    calendar

    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    30      
    << June 2019 >>

    selected entries

    categories

    archives

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM